不幸? むしろ幸運の持ち主だよ俺は。この機体にも乗れるし、あいつらぶっ殺し放題だし。いいこと尽くめだ。
「システムオールグリーン。こっちは大丈夫だ。もう出発していいぞ」
「オーケー。したらいってき、ますっ!」
スイッチを押せば、俺の乗っている機体が発射される。前傾姿勢で目的地までひとっ飛び。
どれくらい前だか忘れたけど、少なくとも百年は前。地球は理由も分からず地球外生命体に襲われた。不定期に来るそいつらは、街も人も潰しまわる。
そうした中で作られたのがこの人型の戦闘機であり俺たちである。いわゆる試験管ベイビーで、遺伝子もいじられてるから身体は丈夫で再生も早い。だからこうやって最前線へ行かされる。
「前方五百メートル、敵の存在を確認。戦闘態勢に入る」
「了解。後七分で援軍が来るから、それまで持ち堪えてくれ」
「七分? そんだけありゃ充分!」
充分倒し尽くせる。
群がる虫(ガブズ)どもに光線銃を向けた。優秀な相棒が自動にロックオンしてくれるから、ぶち噛ませばいい。
死んだそいつらがどんどん落ちてって、塵に消えた。ガブズのいいところは死んだら消滅する所だ。街を壊すな殺すのも場所を選べと、うるさい事は言われない。
打てば当たる数の軍団の中心に入り、銃をオートに切り替えた。そうすれば俺はあいつらの体を引きちぎることに専念できる。
消えるくせに深い緑の血を流し、泣き叫ぶ。耳障りで――興奮する。
向かってくるガブズを蹴散らし、捕まえて頭をひねり潰す。馬鹿みたいに噛み付いてきて、片足をもぎ取られた。激痛に笑いが込み上げてくる。
俺と機体は動きをシンクロさせるために神経をつなげてる。痛みをカットすることも可能だが、それじゃあ手足のように動かない。それに、このくらいの痛みで失神しない身体になってる。自分の手足なんか何度も持ってかれてるし。
「うっぜー」
「ハイルフ、大丈夫か?」
「当然。ラウルたちは後どれくらい?」
「もうすぐ来る。だからお前は後ろに下がっていろ」
いつもフィルネルはおかしなことを言う。生まれた時から俺のメンダーとして傍についてるのに、俺が何するか分からないの? まぁ、わかってるから言ってるんだろうけど。
「ばかいうなよ。俺がクイーン狙わないわけないだろ?」
「バカはお前だ。大人しく引け」
「ごめんね、フィルネルあいしてるよ」
言葉だけ残して本部との通信を切った。
ガブズの群れはクイーンをトップに動いている。雑魚を倒してクイーンに近づく。ゲームの勇者さながらだ。
一匹だけやけにデカいヤツを見つけた。――クイーンだ。興奮で吐きそうになる。
「うぇ」
楽しくて楽しくておかしくなりそうだ。
「うへへっおれがいちばん」
ギアを全開にして、銃のオート機能もマニュアルに戻す。剣に切り替えて、突進した。クイーンを守ろうとするナイトはそっちのけで、あちこちやられるのも構わず、一点だけを見つめる。
頭を一刺しするのと同時に中まで爪が伸びてきた。簡単に相棒みたく腕が切られる。血が出るのも気にせず、もう一刺しもう一刺しと八つ裂きにしてやった。
その頃になってやっと文句を言う仲間の声が聞こえてきた。おそらく気付く前からぶつくさ言っていたのだろう。雑魚を倒す姿にいつものキレがない。
「ラウル、ちゃんと仕事しろよ」
「お前がデカブツ取っちまうからだろ! 俺がやるつもりだったのに!」
「はあ? お前が先に早いもん順だって言い始めたんだろ? ザーシュとヤってっから悪いんじゃない?」
メンダーは精力旺盛なルイナーたちの性処理も行うのが一般的だ。殺るかヤるかしか俺たちにはない。
「それは! 俺とザーシュがヤってるのは当然なんだし、お前が遅れて来いよ!」
「お前ほんと意味わかんない。俺早く治療しないとフィルネルがうるさいから、後よろしく」
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遺伝子的に惹かれあってます。
ちょっと頭おかしい系?