あらすじ:ウリで生計を立てていたリオンだったが、知らぬ間に妊娠させられており太客だったクラウスに売られることとなった。そんな売られた直後の話。


 連れていかれた病院では様々な精密検査を受けさせられた。来た時よりも疲れてしまったリオンだったが、腹の子が多少成長は遅いが順調に育っていると知り安堵した。
 嫌だとは思っているが、心配していないわけではない。
 栄養不足のリオンは点滴を受け、そのまま一日入院することとなった。何故かクラウスと一緒に。
 点滴を終えたその夜は初めて温かい風呂に浸かった。広々とした病室にはキングサイズのベッドの他、浴室と客室、応接室の様な机とソファーが用意されていた。
「リオンさんの体は私が洗いますから、ゆっくり温まってくださいね」
「……風呂って一人ではいるものじゃないの?」
「普通は体を洗う者と一緒に入りますよ。私の家ではそうでした」
 風呂などない家で育ったリオンは一般的な風呂の入り方を知らない。クラウスの話す普通は一般家庭の話ではなかったが、リオンにはそれに気づく術はなかった。
「そうなんだ。なんか大変だね」
「そうでもないですよ。マッサージもしてくれますし、ずいぶんと体が楽になりますから。とは言っても、私は帰りが遅いので一人ではいることが多かったですが」
 クラウスの母は毎日のように香油を使って全身マッサージを楽しんでいたが、出張や会食の多いクラウスの父やクラウス自身は時間を惜しんで、さっと一人で入ることが殆どだった。
「へー、じゃあ一人で入る人も居るんだ」
「中には一人の方が良いという方も居るようですよ。さて、リオンさん、こちらに頭を向けてもらえますか?」
 湯船に入るリオンに頭を縁にもたれかけるよう指示をするとシャワーで髪を濡らしシャンプーで髪を泡立て始めた。温かいお湯もクラウスの手も気持ちが良くうつらうつらと眠気がリオンを襲う。
「気持ちよさそうですね。良かったです。ですが、お風呂で寝るのは危険ですので、もう少し我慢してくださいね」
「んー……」
 クラウスの声になんとか応えてギュッと目を強く閉じて無理矢理大きく開いた。
「これ、良い匂い」
「気に入っていただけましたか? どんな匂いが好きか聞いておけば良かったのですが……」
「なんか、至れり尽くせりだね」
 髪の泡が流され、今度は腕を取られ泡だらけのタオルで擦られる。タオルの泡がどんどんリオンに移り、腕が白くなっていった。
「リオンさんが何もしなくてもいいように、私がすべてして差し上げたくなってしまうんですよね。あなたはそれを望んでいないと思いますけれど」
「まあ、今まで一人で立って生きてきたからね」
 決めてもらうのは楽でいい。そうすればリオンが責任を取らなくて良いからだ。誰かの所為にできる人生は自分の人生とは言えない。
「――でも、クラウスさんがオレを買ったんだ。本当に嫌なこと以外あんたに従うよ」
「……なるべくあなたの望まないことはしたくありません。私は自由に生きる貴方と一緒に過ごしたいのです」
「自由、ね……」
 本当の意味で自由に生きてきたことのないリオンには難しい願いだった。生きるために必死で、望まぬ行為ばかりしてきた。クラウスにはそれが自由に振舞っているように見えたのだろうか? だとすればクラウスが望むリオンにはなれない。
「はい。もっと自由に生きてほしいです。あの狭い世界ではなく広い世界を見て、心地よいところを見つけてほしいです。できれば私も側に居させてほしいですが、それがリオンさんにとって不快でしたらすみません。そこだけは我慢していただきます」
「別にあんたを不快に思ったことなんてないよ。もっとちんこ小さくしろとは思ったけど」
「それは――善処させていただきます……」
 紳士的に扱ってくれているクラウスに不満などなかった。ただ、彼には何故という疑問ばかり浮かんだ。自分に一目惚れする要素がどこにあったのだろうとリオンは不思議に思っていた。
「お湯流しますね。少し寒くなるかもしれませんが、水の中では体を洗えませんので」
「いいけど、クラウスさんは浸からなくて良かったの?」
「私はシャワー派なので。あまり湯船には浸からないんです。お気遣いありがとうございます」
 お湯がどんどん排水口へ流れていき、徐々にリオンの大きくなった腹が現れてきた。何度見ても醜い様だとリオンはため息が出そうになる。
「ふふっ、リオンさんのお腹、どんどんかわいくなりますね。やはりもう少し栄養をつけて全体的に脂肪をつけた方が良さそうですね」
「かわいいか? 腹だけ異様にでかくて気持ち悪いだろ……」
「そんなことありませんよ。異様だからどうと言うよりも、このままではお腹の子に栄養を取られてリオンさんが辛くなっては共倒れになってしまいますよ。今のままでも十分かわいらしいですが、もう少し肉感があった方が安心します」
 少年とも少女ともとれるリオンの体は一部の者からすれば非常に蠱惑的だった。嗜虐心を誘う、非常に危険な姿でもあった。
「確かにこんな体だったら抱き潰しちゃいそうだもんね。クラウスさんだったらすぐオレのこと壊しそう」
「妊婦にそのようなこと、しませんよ」
「でも抱きたくないわけじゃないんでしょ?」
 言葉に詰まってりるクラウスはとてもわかりやすかった。その心が手に取るようにリオンには分かった。
「オレもセックス嫌いなわけじゃないし、もうちょっとそれらしい体になってきたらしよっか。どうせ子供ができることもないし、生でいいよ」
「とても魅力的なお誘いですが、するとしても後ろでしましょう。危険は避けるべきです」
「やらないとは言わないんだね?」
 笑い混じりに問えば、クラウスに困った顔をされた。それが一層リオンの顔をにやつかせる。
「……さ、洗い終わりましたから、シャワーで流しますね」
 クラウスにはぐらかされ、話は泡一緒に流されてしまった。  さっぱりとしたリオンはシャワーヘッドをクラウスから奪い取る。にやついた口はそのままに、クラウスをバスタブに誘い込んだ。
「じゃあ今度はオレの番だね。洗ってあげる」
 もちろん、クラウスがリラックスなどできるはずがなかった。もじゃもじゃの髪は倍以上に泡で大きくされ、体はリオンの体全体を使って洗われた。
「クラウスさんのちんこどんどんでかくなってるんだけど?」
「すみません……お恥ずかしい限りです……」
「ちゃんと反応してくれんのうれしいよ?」
 泡の付いた手で、クラウスの硬いそれを握り、上下に滑らせる。ぬめりが良く、多少強く扱いても手から抜けてしまいそうになった。
「すべるから余計にきもちいでしょ」
「すぐにでもイッてしまいそうです……」
「素直でよろしい。じゃあリオンくんに元気なところみせてね」
 超大なそれの鬼頭と竿をリオンは両手を使って急かすように扱く。
 染み付いた癖で、見ているたけで後ろが開きそうになった。しばらく使っていない穴にこんなものを勢いに任せて突っ込むのは無謀だ。
 しかし、穴を閉めればキュンと中が疼いてしまった。厄介な体を無視してリオンはクラウスに集中する。
「もう……で、ますっ」
「うんうん。いいよ、出して」
 ビクッビクッと手の中で痙攣し、白濁した液体が勢いよく放出された。リオンの手では受け止めきれず、それは床に水溜まりを作った。
「……すごい溜まってたね?」
「すみません……こういうことはご無沙汰だったもので……」
「そうなんだ。まぁでも、これからはオレかたまに抜いてあげるから安心してね?」
 リオンはシャーヘッドをとりクラウスの泡と手や床に残った体液を洗い流す。その間に物欲しそうな視線を感じたがリオンは無視をした。
「……リオンさんは辛くないのですか? 良ければ私が……」
「後ろ入れて欲しくなるからダメ。しばらくオレとはヤらないんでしょ?」
「それは困りました。しばらくはお互いお預け、ですね」
 自分一人すっきりしておいてお預けとはなんだとリオンはクラウスを睨み付ける。吐き出せなかった熱をぐっとこらえ、熱いシャワーをもう一度浴びて浴室を出た。タオルで体を拭き終えると、用意されていた服を適当に漁って着た。慌てて後を追ってきたクラウスを無視してベッドに潜り込む。
「申し訳ございません。何か気分を害することを言ってしまいましたか?」
「オレばっかお預け食らってんじゃん! あんたはいつも気持ちいばっかりで!」
「……私との行為は気持ちよくなかったですか?」
 クラウスのそれはリオンを何度も狂わせた。奥の奥まで押し入ってきて、何も考えられなくなるくらい良かった。良かったが、それをクラウスに伝えるのは癪だった。
 リオンとクラウスの濡れた髪がベッドに染みを作る。クラウスに至っては服すら満足に着られていない。
 リオンが勝手にむかついていただけなのに、まるでクラウスが悪いみたいに取り直そうとするのが余計に苛立った。
「そういうことじゃない。別にあんたは悪くないから。もう良いから」
「リオンさんに我慢ばかりさせてしまって、申し訳ございません。もう少し元気になったら色々なことをしましょうね」
「あんたが謝ることじゃないし……」
 リオンは布団から起きあがり、クラウスをみた。もじゃもじゃ頭ではどんな表情をしているか分からなかったが、柔らかい顔をしてるのだろうとリオンは思った。
「オレが元気になる前に、そのふざけた頭どうにかしてよね。顔が見れないやつの傍には居たくないって言ったよね? 別に対して怖くもないんだから顔だしてよ」
「善処します……。起き上がってくださったので、髪を乾かしてもいいですか? 濡れたままでは体を冷やしてしまいますから」
「勝手にしたら?」
 リオンはドライヤーの熱にこっくりこっくりと船を漕ぎ、そのまま起きることなく寝入ってしまった。


end

***
C94のペーパーを加筆修正しました。
採血しているのにお風呂に入れてしまった……。
大丈夫か心配です。


08/11/18(10/03/18)