マグナス付きの侍従がアキトの部屋に訪れたのは夜の九時を回った頃だった。二人で夕食を取るのはとうに諦め、アキトは応接室で読書がてら時間を潰し、いよいよこれから風呂に入ろうとしていた。
「アキト様、夜分遅くに申し訳ございません。ミハエルでございます」
 ノックの後に聞こえてきた聞きなれた声に、アキトは安心して訪問者を招き入れた。
「どうぞ、入ってください」
 ドアが開かれ中へ入ってきたのは、華やかな雰囲気の美青年だった。
 この国はアキト基準でいう美形が非常に多かった。中でも貴族階級になるとさらにそのレベルが上がる。マグナスの侍従ともなると貴族かそれに連なる親族のみしか就くことができない。そのため、彼もまた目を見張るほどの美丈夫だった。
「こんばんは、ミハエルさん。もしかしてマグナス、帰り遅いのかな?」
「失礼いたします。はい、議会が長引いておりまして、少なくとも一刻はかかるかと。マグナス様よりさ先にお休みになっていただきたいと言付かって参りました」
「そっかぁ。うん、分かった。マグナスに無理しないでねって伝えておいてもらえますか? ミハエルさんも、大変だと思うけど、終わったらゆっくり休んでください」
 仕事があるだろうミハエルを早々に帰し、アキトはため息を吐いた。
 マグナスはアキトの元に毎日のように寝に帰ってくるが、政務とそれ以外の時間は週に三日しか時間を割いてはくれない。不満かといえば否定はできないが、一番優遇されている自覚はあるため、それを口にすることはしない。
 理由はといえば明白で、他のお妃や王子の元に顔を出しているのだ。アキトがこの世界に来たときにはすでに二人の妃と二人の王子がいた。彼らと会うのは当然で、週に一度も会いに来ないような父親はアキトとしても肯定できるものではなかった。
 アキトの感覚からすると、一夫一婦制が普通であり、日替わりで面会するなど家族として正しい姿だとは思わないが、この世界では貴族以上であれば重婚が認められており、アキトの常識とは異なる。重婚する権利に男女の差はないが、女性はより地位のあるものと結婚をすることが良しとされているため、多くの者が一夫多妻の関係にある。
 それはひとえに後継者問題が存在するためであり、貴族の血を絶やさないためである。一般家庭で育ったアキトにはあまり理解できない問題だが、郷に入っては郷に従えとあるように、マグナスの重婚を許した。今でも罪悪感に駆られることがあるが、なんとか心の平穏を保とうとしている。
 それにマグナスの妻たちは異界人のアキトに良くしてくれて、子供たちはとてもかわいい。彼女たちからマグナスを取り上げることも、自分自身から取り上げられることも不可能だとアキトは思っている。今の関係が崩壊しないためにも価値観を受け入れることが最適なのだ。
 貴重なゆっくりと話せる夜を失ったが、これまでも王妃たちの日数が少ない関係で、こういうような時は何度もアキトの配分された一日を分配してきた。夜中戻ってこない日も何度もあった。公務以外でとなれば夫婦の営みをしているのだろうと予想がつく。
 男としての喜びはきっと彼女たちの方がうまく与えられるだろうが、アキトはそれ以外のところでマグナスを愛し癒やしてあげようと心がけている。
 アキトは気を取り直して風呂へと向かい、もやもやした気持ちを洗い流すことにした。そして今日は早く寝てしまおうと思った。マグナスのいない一日はアキトにとっては長すぎるからだ。


 深夜一時を回った頃、アキトのベッドに足下からもぞもぞと入ってくる者がいた。彼は無遠慮にアキトの寝間着のズボンを下げ下着から一物を取り出して銜え込んだ。
 さすがのアキトも下半身に違和感を覚えて目が覚めた。驚き、急いで掛け布団をたくし上げるとおいしそうに自身にむしゃぶりついている彼と目が合った。
「……おかえり、マグナス……びっくりした、どうしたの?」
「んっ、ただいま。気にしないでアキトは寝ていてくれ。起こしてすまない」
 アキトは到底無理な要求に頭を悩ませたが、マグナスの行動がおかしいことの方が気になった。腹筋で起き上がり、上を向こうとしている息子にあきれながら、尻をずりずりと後ろを移動させた。
「お布団からはみ出てるから。しゃぶっていいけど、もっとこっちおいで」
 そう言うと物欲しそうな目で見ていたマグナスの瞳が喜びに変わった。再び口に含み、味わうようにゆっくりとした愛撫を開始する。
 達するにはもどかしい、子供のような口淫だったが、愛おしさのあまりこみ上げてくるものがあった。
 もぐもぐと口を動かすマグナスの頬をなでると彼は気持ちよさそうに目を細めた。顔には疲れが見え、アキトは心が痛んだ。アキトに手伝えることはほとんどなく、こうしてマグナスのしたいようにさせてやることしかできない。
「今日もお疲れ様。明日もあるからできないけど、出したかったらいってね。俺がしてあげるから」
 マグナスの奉仕のお返しにと提案したが、ふるふると首を緩く振られてしまう。行為をしたいというよりもマグナスはアキトの物を咥えたいという思いの方が大きかった。
 マグナスの口内で吸われたり甘噛みされたりといいようにされている息子もじわじわとした蓄積により、決定打があればすぐにでも放てるという段階に来たが、生殺し状態は続いた。
 マグナスの口淫もさらにゆっくりになっていき、目もとろんと落ち始めている。
「え、寝ちゃうの? ならもうちんこ咥えるの止めて、普通に寝よう?」
 引き剥がそうとしたアキトの手を嫌だと払いのけ、マグナスはまたもごもごと口を動かした。
 仕方がなく、そのままにしていると本当に眠ってしまった。まさかそんなわけがないとじっくり観察してみるが、十中八九見覚えのある寝顔のそれだった。
「まじかー。そんなことあるんだ……よっぽど疲れてたんだね」
 よしよしと撫でてやり、マグナスの隣に移動しようと動こうとするとマグナスの唇がアキトの一物を食んだ。万が一にもないと思いたいが、噛みちぎられるのではと玉が萎縮する。元気だった一物がふにゃりと形を変えた。
「これは……俺このままここで寝るのか……。もー仕方ないんだから」
 幸いにも部屋は暖かく、肌寒くはない。なんとか腕を伸ばし、マグナスに掛け布団をかけ直してやり、アキトは自分の背中に枕を並べた。これならば座ったまま寝られそうだと安心する。
 幸せそうによだれを垂らして眠るマグナスを愛おしく思いながらアキトもまた短い眠りについた。


 マグナスのはが覚めると口の中に何かあることに驚き、また口内が乾いたような感覚がした。舌で触り確かめてみると、覚えのある愛しい形をしていた。
 何が起きているのかは和からなかったが、うれしく思い濃厚な液体を求めて激しく絞り出した。アキトの太ももがピクピクと動くのが分かり、期待に胸を膨らませる。
「ん、んっ……!」
 粘ついた精液がマグナスの喉に噴射された。それをおいしそうに飲み干すと、今度は違う味の液体が溢れんばかりに口内に侵入してくる。
「んっ!」
 予想外の反応に目を見開いたが、どうにか受け止め味わう暇なく胃に流し込んだ。だんだんと水量と勢いが落ち、マグナスも一息吐くことができた。
ちゅうっと残滓を吸い取り、竿もきれいに舐め清める。
「アキト……朝からたくさん美味しい物をくれるのだな……?」
 起き上がり座ったまま寝ているアキトの頬を撫でる。するとアキトの眉間に皺が寄りうっすらと瞼が持ち上がった。
「まぐ、なす……?」
「起こしてしまったか、すまない」
「んーん、へーき……マグナスは、よくねれた?」
 寝ぼけ眼のアキトに抱き寄せられ、密着する。髪を撫でられながらマグナスはアキトにすりすりと頬擦りをした。
「ああ、すっかり疲れがとれた」
「それは良かった。なんか俺もすっきりしてるような気がするけど、寝てる間に抜いた?」
「アキトは私にたんと美酒をくれたぞ。いつもと違う味も楽しめた」
 抱きしめてきたアキト自身に体を剥がされた。怪訝な面持ちでアキトに見つめられ、にやりと笑ってみせる。
「まさか……飲んだの?」
「当然だろう。アキトが私にくれる物を拒むわけがない」
「やめてよーさすがにそれは飲んじゃだめなやつだよ! 今からでも遅くないからぺってしなさい!」
 マグナスは出すものかと両手で口を覆い、アキトを困らせた。困らせられることが嬉しくて、昨日の疲れが嘘のように体も心も軽くなった。
「アキトの美酒は私にとっては万病に効く薬と同じだ。奪ってくれるな」
「絶対身体悪くするから飲むの止めた方がいいと思うよ……」
「ならば聞くが、アキトは私の小水をどう思う? 飲めるか?」
「そりゃマグナスの聖水はお金だし出ても飲みたい代物だから飲めるよ。俺だけじゃなくて他の人も絶対飲んでみたいって思ってるよ。本当に気をつけてね?」
 おかしな心配をするアキトをくすくすと笑い、倒れるようにアキトを連れてベッドへ沈んだ。
「本当にアキトは面白いことをいう。……まだ起きるには早いな。どれアキト、私に付き合ってくれるか?」
「……時間と場所が許すなら俺はいつでもマグナスと愛し合いたいよ」
「私は時間も場所も気にせずアキトと睦み合いたいがな」
 二人は唇を合わせ、アキトはマグナスの口内に残る自分のしでかした過ちを再確認させられた。だが、そんなことも忘れるような朝をマグナスはアキトに与えたのだった。


end

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J庭42のペーパーでした。
フェラしながら寝ちゃう子が書きたかったので書きました。


03/05/17