残暑のせいか、気温の変化が激しい日々が続いた。昨日は寒かったと思えば今日は暑い。会社のエアコンは相変わらず強い冷風のままだし、電車も大して変わらない。加えて残業続きだった先週までの生活を考えれば、この結果は頷ける。
 何かって言ったら風邪を引いた。咳も鼻も出るし、熱だって夜には八度超えることもここ数日の内で二回くらいはあった。大したことない風邪がズルズル長引いて本当に迷惑極まりない。かと言って病院なんて行ってる暇は社会人にはないわけで、どこでも買えるような薬に頼ってるからどうしようもない。
「あーだるっ」
「大丈夫? 会社休んじゃえばいいじゃん。有給まだ残ってるんでしょ?」
「こんな大したことない風邪如きにオレの有給使わせたくない。あと一日行けば休みだし」
 ゴホゴホ咳き込んで、説得力の欠ける言葉になってしまった。何度咳き込んでも残ってて喉がモヤモヤしてるし、すっきりしてもカラカラするしで違和感ありまくりだ。滅多に風邪なんて引かないから無駄な体力使ってストレス溜まる。
「ほら、そんな咳してるなら休みなよ。それか無理せずもう寝てください。洗濯物たたむのだって俺がやるし」
「だってまだ飯食ったばっかだし……風呂も入ってないし……」
「お風呂入って髪乾かして寝ればいいでしょ? もう九時過ぎてるよ」
 今風呂も入っても十時には余裕で寝れる。六時に起きればいいし、八時間も寝れてしまう。それもいいかと思い、ふわふわした頭で風呂に入った。熱めにしたお湯なのに大して熱くなくて、熱があるんだと実感する。
 風呂を出てダラダラソファーで寝転がっていると、オレのすぐあとに風呂に入った克哉が出てきた。
「まだ寝てなかったの!?」
「だって髪まだ濡れてるし……起きたら爆発するなと思って……」
「ドライヤーで乾かせばいいじゃん!」
 ここから動くのが億劫だから、すぐ終わるドライヤーすらめんどくさいんだ。まだまだ自然乾燥いける時期だし。
「ソファーでいいからちゃんと座って。乾かしてあげるから」
 克哉はそう言うと洗面所からドライヤーを持ってきてくれた。自宅が一気に快適な床屋になる。ドライヤーの熱が心地よい。
「あったかー」
「結構乾いてきてるね。……俺が代わってあげれたらいいんだけど……早く風邪治るといいね」
「いや、それは困る。お前が風邪ひいたら色々やらなきゃいけないじゃん。お前の風邪はオレが貰うから、頼むから体調崩さないでくれ」
 家事は嫌いじゃないけどめんどくさいことが多い。頭使って動かないとなかなか終わらないし。
「もーなんでそういうこと言うかなぁ」
 丁寧に優しく乾かしてくれていた手がくしゃくしゃ髪をかき混ぜてくる。かき混ぜるのかま意外と長く、いつの間にかドライヤーも冷風に変わっていた。
「はい、終わり! 温かくして寝るんだよ? 一緒に寝る?」
「うつすからいい。……ありがと、おやすみ」
 よたよたおぼつかない足取りで自分の部屋に入る。ベッドに倒れ込み、もぞもぞ布団を被った。だいぶ少なくなったティッシュで鼻をかんで、側のゴミ箱に投げ入れる。
 布団の中で落ち着くと、布団をあっためようと必死になって体温が奪われくような感覚がした。
 暑いのに寒くて、やっぱり克哉と寝ればよかったかもと思ってしまった事に、熱でいかれて心細くなってることを実感させられる。
「土曜はちゃんと病院行こう……」
 だるい身体は休息を欲しがってかすぐに眠りについた。明日は少しでもマシになってることを祈った。


end

***
やおいだなあ
風邪ひいて変わってあげたいっていうセリフを言わせたかっただけです。


09/09/15