※同人誌『monopoly』のその後です。


 半期ごとに行われるあのイベントから一週間が経った。その間翔太は変わらず出勤をして、仕事に精を出していた。一度、社長に呼ばれ下山の件を確認された。翔太自身もそれを望んでいると伝えると、二つ返事で承諾してくれた。聞けばこう言った退職は珍しくないらしい。ただ、普通の離職ならばなんの問題も発生しないが、身請けのような場合かなりの額を客が払わなければならない。一体下山は幾らこの会社に払ったのだろうと思いながら社長室を出た。
 それから直ぐに通達が着て、翔太は次の休みに出て行くことが決まった。
 狭い会社で噂は直ぐに広まり、昂がノックもなしに引越しの準備で忙しい翔太の部屋を訪ねてきた。
「翔太! お前、何で!?」
「勝手に開けるなよな」
「そんな事どうでもいいだろ! なんで下山さんとこ行くって――」
「ここにいるより楽しそうだったから。下山さんのこと結構好きだし」
 自分のモノになってくれたのがなんだかとても嬉しかった。だから翔太はこの決断が間違いだとは思わない。
 荷造りをしていた手を再び動かす。来た時には鞄一つで済んだ荷物も今ではダンボールが何個も必要になっていた。家具はすべて備え付けのものだったので置いていくにしろ、二年とは短いようで長いのだと改めて感じさせた。
「そんなんでお前の人生決めていいのかよ……」
「死ぬまで面倒見てくれるって言ってくれたし。人生なんてなるようになってるさ。普通のばかより絶対いい生活できてるし」
「……まぁ、こんな会社に入ってる時点で普通の人生から逸脱してるもんな。うわーでもやだよオレ、お前いなくなんの」
 しゃがみこんでる昂が、いた事はないが、弟のように思えて可愛く見える。近付いて低くてつむじの見える頭をくしゃくしゃと撫でた。
「あははっ、お前かわいいなー。別に一生の別れじゃないんたからまた外で会えばいいだろ。お前おれともう遊ぶつもりなかったの?」
「んなわけないだろ!」
 勢い良く立ち上がった昂をよけて翔太は一歩後ろに下がる。昂の目は充血して潤んでいた。そんなに好かれてたのかと驚きながらも嬉しかった。高校時代の友達よりもある種濃い付き合いをしている昂が、別れを悲しんでくれるのは好いてくれていた証明だ。
「ならいいだろ。別にお互い閉じ込められてるわけじゃないし、会いたければ会えるさ。おれどうせ暇だからお前が遊んでくれないとやだし」
「……お前と違ってちゃんと仕事してるオレは忙しくて構ってやれないかもだけどな! ……たまになら時間作って遊んでやるよ」
「そうしてそうして」
 元気になった昴を見てホッとした。悲しい顔で別れるのは嫌いだ。気持ちが残ってしまう。
「そういえばどこに住むことになったんだ?」
「んー知らない。なんか住所変更とか下山さんがやってくれたみたいだし。おれ車乗ってれば家に着くし。住所書くこととかそんななくない? あってもその時聞けばいいし」
「……お前それは駄目だろ。一人で出かけたときヤバイだろ」
「そうかー? ならついたらGPS使って家登録しとくわ。聞く手間省けるし」
 心配症だなと翔太は感じたが、口には出さなかった。またうるさく言われると思ったからだ。
 二年この寮に住んだが、住所は完全には覚えていない。それでも、昴にメールをすれば分かったので、問題があるとは思わなかった。
「お前ほんとちゃんとした方がいいと思うぞ……」
「おー、これからはちゃんとするわ」
 昴にも引越し作業を手伝わせ、終わる頃にはとっくに夕飯の時間になっていた。二人で食堂で夕食を済ませ、その後は散らかっている翔太の部屋ではなく昴の部屋でテレビを見て過ごした。
 それから二日後、翔太は会社を去った。下山がわざわざ仕事を抜け出して迎えに来てくれ、その車の後ろをちょこんと翔太の荷物が乗ったトラックが付いて走る。山手線沿いの駅にある背の高いマンションに連れられ、エレベーターで最上階まで上った。ワンフロア丸々下山の家らしく、ドアがひとつしか見当たらない。本当に相当な金持ちなのだなと翔太は実感した。
「ここは東京で仕事をする時の家なんだけど、今度ゆっくりできたら別のとこも紹介するね」
「え、まだ部屋あんの?」
「うん、無駄にお金あったから税金対策にと思って、何個か前に買っちゃったんだよね。ここが一番狭いから、窮屈だったらごめんね」
 中はどう見てもファミリー用の広さで、リビングだけで翔太に与えられた部屋も以前よりも倍近く広かった。金持ちの感覚は良く分からないなと翔太は距離を感じた。
「ここまで来て申し訳ないんだけど、少しまだ仕事が残ってて戻らなきゃいけないんだ……。本当にごめんね」
「いいよ。仕事はちゃんとやんなきゃだし」
「荷物とかは業者が運んでくれるから。何か必要なことがあればあそこの電話でコンシェルジュにかけてもらえば大体の要望は叶うから。家の物は勝手にどんどん使ってね。これからは翔太くんの物でもあるんだから」
 口早に説明され、どうやら本当に急いでいたようですぐに仕事に戻ってしまう。その後荷物が届き、翔太の部屋にすべて運んでもらうと業者を帰した。運べないほど大きな家具があるわけではないので、時間を消費するために一人で片付けることにした。
「こんな家に一人暮らしって随分さみしいな……」
 服をクローゼットにしまいながら独りごちる。ウォークインクローゼットは半分も満たされず、広いばかりの部屋はほどんど物が置けなかった。これから増えるにしても、温度は心地よい部屋なのに寒いなと感じた。
 外が暗くなり、片付けの終えた翔太はキッチンで冷蔵庫を漁る。野菜も魚も肉も大体揃っており、一人では腐らせてしまう程だ。正直二人でも毎日消費しなければ危うい。
「チャーハンなら色々ぶっ込めるし、作るかなー」
 大雑把な物なら翔太にも作ることができた。高校時代に共働きの両親と仕事をし始めた兄のために、週に何度か夕飯を作っていた。出来のいい兄と比べられたが、その通りだと思っていたので特に荒れる事はなかった。兄とも決して不中ではない。
 冷蔵庫から取り出した野菜を細かく刻み、冷凍保存されていた白米を混ぜる。これには案外庶民派だなという共通点が見つけられて嬉しかった。
 下山が何時帰ってくるかは分からないが、二人分のチャーハンを作った。簡単に味噌汁を作り、一人分よそって椅子が六脚並んでいるテーブルに運ぶ。静かな部屋はテレビをつけることで自分を誤魔化した。
 寮に入れば誰か人の気配を感じることができたが、二十歳になった今でも、一人は寂しいと感じる。もっと二人暮らしはい良いものかと思ったのに。
 夕食を済ませ、ゴロゴロとに寝転がりテレビを見た。大きなテレビのすぐ前にいるせいか、全体が捉えにくい。
 床暖房が完備されているからか絨毯は温かく、眠気を誘った。うつらうつらと瞼が落ち、音がだんだんと遠くなってくる。


 引越しの疲れが溜まっていたようだ。先程から三時間経っていた。いつの間にかタオルがかけられており、下山が帰宅している事が分かる。シャワーの音も聞こえてくるので、風呂場にいるのだろう。そういえば、と風呂に入っていないことを思い出し、翔太も風呂場に向かった。
 眠い目を擦りながら服を脱ぐ。最後の一枚を洗濯籠に放り投げ、磨りガラス扉を開いた。
 下山の肩が震え、シャワーのノズルを持ったままこちらを向かれる。背中にはまだ泡が残ったままだ。
「おかえり。おれもお風呂入っちゃうね」
「え!? なっ――なんで……」
「まだ風呂入ってなかったし」
 ノズルを奪い取り、下山についた泡をすべて落とした。その後頭からお湯を浴びて全身を濡らす。立ったままシャンプーをワンプッシュして、髪を洗う。呆然とする下山を横目に隅々まで身体を洗っていった。
「あー、そうだ、下山さん。今日シてみる? おれ寝てたし、下山さんが元気ならシようよ。したら浣腸するし。どうする?」
「シたい、な……」
「じゃあしよっか。おれディルドとかしか入れたことないから、ちゃんと入るかわかんないけど」
 お湯の貼った湯船にさっぱりと綺麗になった身体を沈める。下山も続いて入ってきた。流石に広いとはいえ、大の大人二人が入るのと狭くなる。
「浣腸、僕がやってもいい?」
「え、おれがうんこするとこみたいの? 流石に汚いし、トイレでしたいんだけど……」
「そこまで見せてくれるの!? トイレまでついてくね」
「あははっ、下山さんってほんとおもしろいね」
 人の排泄シーンなど見たいとも思わない。それを喜んでみようとする下山はかなり変わっているなと翔太は思った。翔太は翔太で羞恥心が薄く、見られようが何されようが気にしていない。
 緩く伸ばした爪先が下山の尻に当たる。向き合って座る翔太の足は下山に挟まれて、お互いに場所を譲り合っていた。
「下山さんのちんこ、おれのより全然でかいね。重そう」
「そう、かな」
「うん。カリも太いし入るかな?」
 勃起したら、今まで翔太が入れてきたディルドより二周りも大きそうだ。期待にきゅんっと尻が疼く。
 翔太が見ていたのと同じように、下山も翔太のものに視線を向けていたことに気付いた。
「なぁに? そんなに見て。飲みたい……?」
「僕はいつだって翔太くんに触れていたいし、身体中で満たしたいと思ってるよ」
 イケメンに熱い眼差しを向けられるのは悪くない。昨日はそんなに出していないし、今出したところでまだ余裕がある。
 翔太は立ち上がり、下山の眼前に下半身を晒した。物欲しそうにそれを凝視される。それだけで起ちそうになった。
「……しゃぶっていいよ」
 下山が一歩と歩かない間に翔太に触れて、ひと思いに頬ばられる。その刺激に応えるように、どんどん硬度が増す。水の滴るのとは違い淫らな音が浴室に響いた。
「っあ……」
 巧妙な舌技に腰が揺れ、尻の奥が肩で息をするように早くヒクつく。そんな自分の刺激にさえ感じてしまう。
「いい、よっ……あっ……ふ、ぁ……んんっ」
 裏筋も玉も鈴口も柔らかい肉厚の舌と強弱の付けられたバキュームに陥落する。どんどん追い込まれて、イキやすい翔太では太刀打ち出来ない。今にも噴火しそうになるが、まだこの快楽を味わっていたくてどうにか我慢する。
「んっ、ふ……らひへ、ふぅっ……いいんらお」
「ま、だ、……ああっ……や、だぁ」
 出したいと揺れる腰を止めることが出来なくなり、翔太は無理だと悟った。耐え抜けず、決壊する。下山の巧技は当然のことながら、射精に伴う快楽も全身で味わった。腰が両の脚だけでは支えきれず、手を壁につけどうにか倒れずにいる。
「あっ、あっ……!」
 最後に強く吸われ、残っていたものもすべて下山の口に収められた。翔太は自身を口内から抜き、少し荒い呼吸をしながら眼下の下山を見る。
「おいひい……」
 恍惚とした顔で翔太の出したモノをしっかりと味わっている。なかなか嚥下しない下山の喉がようやく動いた。
「……翔太くん、今日初めて出した?」
「そうだけど……、そういうの分かるの?」
「うん。ここ一年でだいぶ言い当てるようになったかなー。やっぱりちょっとずつ違うんだよね。一番搾りが一番美味しい」
 萎えたそれにキスをされる。イったばかりで敏感な息子はまた反応しそうになり、下山に期待の目を向けられた。
「寒くない?」
「うん平気」
 そう短くない間、外気に触れていた肌は冷たいが湯気のおかげで寒いとは感じなかった。それなのに肩までまた湯に浸からされ、しばらくそのままでいるよう言われてしまう。
「僕はちょっと暑いから先に出てるね」
「えー」
「百とは言わないから五十秒くらい数えたら出ておいで。準備があるからゆっくりね」
 そう言われて仕方なく心の中で数を数えた。ローションなしで入れるのはかなり痛いと身体がよく知っている。
 五十を余裕で過ぎた頃、そろそろいいかと湯船から上がり簡単に身体を拭き寝室に向かった。
 この扉を開けてしまえばもう戻ることはできないだろう。好きとか嫌いとかそういうのを考えれば、翔太は下山が好きだ。かっこいいし優しいし、何より自分を好いてくれている。少し変だが、一人だからか下山が居なかったからなのか、帰ってくるまで寂しいと感じた。ならばやはり好きなのか、これでいいのか。
 難しいことを考えるのは疲れる。その上全裸は暖房がついているとはいえ寒い。好きならこれからもっと好きになればいい。きっと好きにならせてくれるはずだ。
 翔太は考えることを放棄して扉を開いた。
 キングサイズのベッドがドンと置かれ、ソファーとテーブルの他にはほとんど何もない。シンプル過ぎて寂しい部屋に、下山が居た。バスローブを身に着けて、自分の家だというのに所在なさげに座っている。それがおかしくて翔太はクスリと笑う。
「おれが言うのも変だけど、お待たせ」
「う、ん……ごめんね。しよっか」
 二人でベッドに乗り上げて、ムードなんて関係ないと翔太は唇を下山のそれに押し付けた。数えるほどしかしたことのない彼とのキスは深く、甘い。こちらから攻めたのに、何時の間にか口内を舌で蹂躙される。息継ぎもままならず、苦しいのに気持ちが良い。どこもかしこも潤んでしまう。
「んっ……あっ、んんっ」
「はぁっ……んっ」
 下山の指が翔太の胸を弄る。円を書くようにコリコリと小さかった粒を育てていく。
 ジンジンと胸が疼いて腰が揺れる。反応しかけているそれを、下山の太腿に押し付けた。
「ぅあ、……も、あっ触って……っ」
「どこ触って欲しい……?」
「ん、ふぅっ……あぅ、う、しろっ……まえもっ」
「両方欲しいの? 翔太くんは欲しがりやさんだね」
 下山はローションをたっぷり掌たらして、両手をベタベタにする。滑りの良くなった指は簡単に蕾を押し入られる。前も器用に擦られ、すぐに起立した。
「あっあっ……ふっ、くぅ……っあぁ」
 後ろは少しもの足りたなかったが、一人でやるよりも何倍も気持ちがいい。指が三本になり、入口も奥も前立腺も弾けるのうな快楽がもたらされる。
「お腹綺麗そうだね」
「んぁっ……なかぁっ……はぁっ」
「大丈夫だよ。僕としては翔太くんのうんちまみれでセックスするのもいいと思うんだけど……。性癖を押し付けすぎるのはダメだからしないよ。安心して」
 快感で痺れた脳の端っこで、飲尿までなら自分にもできるかな、と下山に寄り添う考えをした。
「も、っいれて……ぁんんっ……でちゃぅうっ」
 今度は一緒にイキたくて、自ら根元を押さえる。潤んだ瞳で下山に訴えた。
「はぁや、……くぅっ」
「あんまり煽っちゃだめだよ。最初は優しくしたいから」
 瞼にキスが落とされて、下山の切っ先があてがわれる。ぬぷぬぷ入口で焦らされると一気に最奥まで突き刺された。
「ああっ」
 衝撃に背中がしなる。普段とは違う充溢感に身体が震え悦んだ。
「あぁ、すごいね……翔太君の中、すごく気持ちいい。このままイッちゃいそうだよ」
 雄の顔をした下山が熱の篭った瞳で見てくる。その色気にやられてしまいそうだった。
「うごいて、いいよ」
 そう言うとゆっくり腰を動かし突いてくる。入口も奥も味わうように蹂躙された。バイブとは違う、不規則な動きに翔太は翻弄される。けれどももどかしく、もっと飛ぶくらいの快感を求めてしまう。
「あっあ、んっ……はぁっああっ、もっとぉ! もっと、んぁっ、激しく、してぇ」
「ゆっくりじっくり優しくやりたいって言ったのに」
「だってだってぇっ、ぁあっ!」
 ぐっと凝りを押され、腰が跳ねる。そこから追い詰められる様にガツガツ掘られ、翔太の脳が快楽でオーバーヒートした。翔太のモノからはだらだら涎が垂れて壊れているみたいだ。常に次の高まりが迫ってくる。
「はっあっあんんっ、でちゃ……でちゃうっ、ひぁあっ」
 白濁とした物が勢い良く翔太と下山の胸に飛び散った。中もそれもビクビク震え悦楽の涙を流している。
「ああっいって、るからっはぁっ」
「あっ、もうっちょっと、まってねっ……んっ」
 イッてる最中により高みに向かわされ、頭がどうにかなりそうだった。
「だめぇだめぇっ、あっんっあっ、おかしく、なるぅっ」
「はっ、ふ、ぅッ」
 中に熱情が吐き出される。熱に満たされ、わずかに翔太も放出した。
 お互い空気を荒く吸い込み肩を震わせる。潤む視線を通わせてどちらともなくキスをした。初めは愛しさを込めて、次第に奪い合うように激しさを増す。
 中の下山が大きくなり主張しだす。
「んっ……もっかい、しよっか」
 翔太は抜かせないようにと足と腕で下山に絡みついた。そして、より硬度を高めたことで下山が答える。


 結局、下山が出なくなるまでまぐわいは続いた。体力的に翔太もぐったりとベッドに沈んでいる。
「……初めてなのにごめんねこんな……」
「ううん、おれも気持ちかったし。でももう腰がガクガク」
 盛り過ぎたことを自覚してお互い苦笑した。身動きする力は残っておらず、どうにか注ぎ込まれた愛液を掻き出す。
「お腹たぷたぷだったからすごい出たね」
「ごめんね……」
「謝んないでよ。おれだって望んだことなんだから」
 申し訳なさそうにする下山の唇をぺろっと舐める。翔太は疲れながらもふにゃっと笑った。キスを返されて、見つめ合う。また起ちそうになる自分に呆れつつ、翔太は下山に擦り寄った。
「すきだよ、下山さん。また今度しようね」
「僕は翔太くんのこと大好きだよ」
「……そういうのずるい。おれがそんなに好きじゃないみたい」
「仕方ないよ。僕の方がずっと翔太くんのことを好きだったんだから」
 好き好き言われて恥ずかしくなる。翔太は布団を深く被って逃げた。
 その上から下山の掌の暖かさを感じて瞳を閉じた。


end

***
もう一回リベンジしたいです。


04/30/14