「あ、……後一時間しかないじゃん」
 半年前に発表された世界滅亡宣言は、人々の混乱と恐怖を与えた。半年というのは短いようで長く、しばらくして落ち着いたのか、世間は前と同じように動き出した。かくいう俺も、変わらず仕事三昧の日々だった。
 しかしながら、予定日が同棲を始めた記念日と言うのは如何なものか。どこも店などやっているわけもなく、なんとか通っている電気と水道、ガスには感謝だ。
 終末記念ということでか、世界中が平日だというのに休日だ。今日一日はどこも機械任せでほとんど機能していない。インフラも壊れたらお終いだ。
「なんかし残したことある?」
 お前がそれを聞くのかと思った。ありまくりだ。
 出会って五年、付き合ってもそんなに変わらないか。同棲して三年。セックスレスどころかノーセックスだ。お互いフェラも経験済みで、キスなんか毎日してて。なのになんでかノーセックス。有り得ない。据え膳とはなんなのか。
「セックスしたい」
「抜きたいのか?」
「最後なんだからヤろうよ」
「手伝ってやるからちんこ出せ」
 何度言葉にしてもオールスルー。キスしただけで勃っておいて、俺のオナニーで抜いておいて、こいつは一体なんなんだ。
「最後なんだからいいじゃん。しようや」
「……オレはお前と居れればそれでいい」
 俺はそれじゃヤダって言ってんの分かんないのかこいつ。
 拒否るくせに触れてくる。抱きしめられて、温もりを感じさせられて、それで終わりだ。今だって握られた左手が熱い。触れてる肩からも伝わってくる。
「俺はよくないしたい。なんでしてくないの? 最後なんだから話せよいい加減。時間ないんだよ」
 こんな最後までイラついて正直悲しくなる。
「あー――……オレ、さ、モテるじゃん。そこそこ顔整ってるし。性格もそんな悪くないって言うか自分でも割と尽くしちゃうタイプだって思うし……」
「ああ、ああ。イケメンだよお前。お前の優しくて全身から俺の事好きって言ってるとこ好きだよ」
 左手をギュッと握ったら、少し強い力で返ってきた。
「オレもはっきり言葉にしてくれるとこすき。……そんで、結構残念がられたっていうか思ってたのと違ったみたいな……」
「そりゃ相手が悪い」
「浮気とかもされちゃって……顔はいいけどセックスはね〜とか言われて、向こうの浮気なのにこっちが振られるし……」
「おいこら。お前が俺を決めつけてんじゃねぇか。そいつらと同じことしてんじゃねぇよ」
 くだらねぇ。心底くだらねぇ。そんなことで俺は何年も何年も不満抱えて、それでもこいつのこと好きだしとか健気に思って我慢してたのか。
 握力全開でこいつの右手を握り潰した。左手じゃあ本来の力は出せなくて折るなんて到底無理だが、かなりの痛みを与えられたはずだ。
「いたいっ、痛いよ!」
 涙目で見てきても知るか。こいつが明らかに悪いんだ。
「俺はな、別にお前がセックスが上手かろうが下手だろうが浮気して別れ切り出したりなんかしねぇよ。むしろシなさすぎて浮気しようかと思ったわ!」
「でも……」
「何がでもだ。ケツに指突っ込んでおきながらヤりたくないとかいうなよ!」
 挿れない癖に、挿れる前まではバッチリしているから余計に不満なんだ。バカなんじゃないか丸出しで。
 今からでも遅くない。下半身も何も丸出しで剥き出しの欲望塗れたセックスをおっぱじめるしかないよな?
「したいのか! したくないのか! ハッキリしろよ!」
「したいに決まってるよ! 挿れたら終わりだって言い聞かせて我慢してたんだから!」
「よし、ならするぞ! ほら時間ないんだから早く服脱げ」
 俺もちゃっちゃかジャージを脱いで、ベッドまでは時間がもったいないからこのままソファーでどうにかなろうと急かした。
 浮気もしないでこの五年、俺はよく我慢した。久しぶりのセックスに期待に胸もちんこも膨らんでいく。相変わらずいい身体してやがる。
「ああ、もう勃たせて」
「それはお互い様だろ」
 キスも愛撫も何時間たってしてられた。だってこれから繋がれるんだ。ドロドロのぐしゃぐしゃのズブズブで、もういつだってウエルカム。
「あっ、……んはぁっ……も、いいからぁ……ああっ」
「んっ……挿れる、よっ」
 ガチガチのちんこがそえられて、ゆっくり押し開いていく。まだ入りきってすらいないのに、頭も目の前も真っ白に染まって訳が分からなくなった。


end

***
ギャグです。


01/06/14