カタカタと千尋はパソコンのキーボードを叩いた。ソファーに座りながらの作業は視線が低く、首が凝りやすい。既に何度か解すために首を回している。
 千尋の隣で同棲相手の千明がつまらなそうにテレビを見つめていた。体育座りをして、膝の上に顎を載せている。今週の金曜映画はお気に召さなかったようだ。
 千尋が今やっているのは早く帰ってきた代償で、そう難しいものではない。後十分もあれば終わる作業だ。
 千明のチラチラ送ってくる視線が早く構ってくれと訴えてくる。
「ちー、ひまぁ」
「もうちょっと待っててね。すぐ終わるから」
 チュッと千尋の頬に口付けが降ってきた。千明がいる右側だけこめかみや顎にまで軽いリップ音が響く。幅の広いVネックの長袖は首筋が無防備で、段々と下がってくる唇に狙われた。襟を少し引っ張られきつく肩を吸われて痕をつけられる。そこを舌で舐められじんわりと快楽の芽が育ち始めた。
「ダメだって、ちー……んっ」
 キーボードを打つ手が止まる。肩口から上目遣いで覗き込まれる。目には熱がこもっており、千尋まで身体の中に火が灯りそうだった。
「ちーは、ちーとお仕事どっちが大事なの?」
「ちーだよ。でも、ちーといるためにはお仕事しないとだめだから。ごめんね」
 よしよしと宥めるように千明の頭を撫でる。気持ち良さそうにしつつも不満は晴れていないようだ。
「やだ。ぎゅってしてちゅーしてくれなきゃ許さない!」
 肩に両手を回され、怒った顔が距離を詰めるように近付いた。千尋の唇を千明のそれが噛み付くように覆った。隙間を逃さず千明の舌が口内に入る。知り尽くされた敏感な場所を何度も意地悪く刺激された。
「やぁっ、ダメだって……仕事あるから……あ、ふぁっ」
 言葉では拒絶しながらも身体は欲望に従順で、千尋の舌ももっともっとと千明を求める。途中までになってるファイルを慣れた手つきで保存し、そっとパソコンを閉じた。邪魔になったそれを器用に体勢をずらしながら床に置く。その頃にはもう千尋はソファーに寝転がるように組み敷かれ、千明の下にいた。
「あ、んっ……もー、いたずらさんは誰だ?」
 服の下から手を入れられ、千尋の胸はいやらしく千明に触れられる。柔らかかった乳首は主張するように芯を持って大きくなった。
「ちー、すきすきだいすき」
 千尋の唇を塞ぎ服をたくしあげた千明に今度は胸を吸われる。厚い千明の舌が乳暈をくるりと円を書くように刺激した。反対の右胸は指の腹で捏ねくり回される。
 舌はなかなか乳首に触れてはくれず、より強い快感をを得られない。千尋はもっと欲しくて、無意識に自ら舌が当たるよう動いた。それに気付いたのか目を細めた千明に望み通りとばかりに、突起を刺激されそこを強く吸い上げられる。
「ああんっ……あっ……やぁ、んあっ……ちー、ちー!」
「ん、なぁに? きもちいでしょ?」
「きも、ちぃ! ぁあっ……もっとぉっ、んぅ……んんっ」
 交互に乳頭を舌で弄られ、真っ赤になると徐々に千明は下にさがって行った。つーっと線を引かれ、優しくヘソをべとべとになるまで舐められる。そしてついに敏感で熱を持ち、反り返った花芯まできた。
 チュッとキスをされるだけで一筋の涙を流す。ぴくぴく震えてもっとだと足りないと欲張る。
「ちーはどこもかしこもかわいいね」
「むぅ……ちーのが絶対かわいいよ」
「うそ、ちーのがかわいい」
「嘘じゃないもん」
 手を伸ばしてキスをせがんだ。千明がそれに応えてくれて再び深く唇が重なった。
「ちーのかわいいの食べていい?」
「んっ……たべて。ちーのたべて、気持ちよくしてぇ」
 千尋は千明の口に自分のそれが消えていくのを見た。温かくて柔らかい。そこにいるだけで気持ちがいい。咥えて口内で舌を押し付けられた。快感の波が一気に千尋を襲う。
「あっ、あっ、……ひぅっ……!」
 鬼頭や尿道といった弱い場所を集中的に責められた。目の前がちかちかする。頭が真っ白になる程の快楽に腰が動いた。
「んっ、あっ……だめっ……でちゃっ――ああっ」
 千明の喉めがけて欲望が弾け飛ぶ。最後まで絞り取ろうと尚も吸われ何度か扱かれた。余韻に浸っているというのに、千尋は飽きもせずまた熱が込み上がってきそうだった。
「ちーのおいし」
「あぅ……ほんと? ちーにもちょうだい」
 キスが欲しくて不味いと知ってるそれを千尋は求める。舌を絡めるとやはり苦くて、千明の唾液の甘さが中和した。
「ちーも、ちーの舐めたい……だめ?」
「でも、ちーお仕事残ってるでしょ?」
「ちーが相手してって言ったのに、そんなこと言うの?」
 酷いと今度は千尋が不満げに千明を睨む。
 千明のものを口いっぱいに頬張りたかった。味わって側で千明の匂いを体中で感じたかった。どちらにしろこんな満たされない身体では、簡単な仕事もなかなか終えることができない。
 千尋は千明の意思を無視してソファーを下りて、彼の下半身を弄った。
「んふふっ、ちーのおっきいの」
 千尋の方を向いて尻をつけた千明の太い楔をズボンの上から愛おしく思いながら撫でる。ジッパーを下せばむわっと雄の匂いが立ち込めた。
「あー、悪い子だ」
「ちーのことずっと見つめられなかった悪い子は、ちーのおっきいのを慰めてあげるの」
 既に下着を濡らしている千明のそれを、ブルンっと勢いよく外に出す。硬くそそり立った肉棒を大きな飴を舐めるように下から上まで味わった。甘い先走りの蜜をちゅうっと吸い取る。ぴくぴく震えて泣きだすそれを宥めるように口の中に招き入れた。
 流石に奥まで咥えるのは苦しくて、根元は右手で、淫嚢は左手で優しく揉んだ。
「んぅっ……ちー上手。すぐイっちゃいそう」
「んぁ……んっ、んっ……ほんと? きもちい?」
「ちーのお口すっごくきもちい」
 丁寧に裏筋や鬼頭を愛でる。その都度反応を見せる千明が可愛かった。
 右手の真ん中三本を口に含みよく濡らし、千尋は千明の会陰を撫でその奥の窄まりを突く。親指で会陰を刺激しながら中指をゆっくり沈ませた。千明の中は熱くうねって指を締め付けられる。
「あっ……なか、んんっ」
 口ではじゅぶじゅぶ音を立てて千明をしゃぶって興奮を誘った。中指は的確に千明の好きなところを押す。
「あっあっ……ちー、ちぃっ……もっで、るっ!」
 甘く濃い花蜜が千尋の喉を打った。断続的にもたされ、溢れないように飲み込む。何度か喉に引っかかるも、すべて味わい尽くした。
「はぁっ……よかったよ、ちー。大丈夫?」
「らいろーぶ、んくっ……ちーの飲んだら元気でた。もうちょっと頑張るから、それまで待っててくれる?」
 蕩けた千明の頬を撫で、触れるだけのキスをする。 「お口の中ちーでいっぱいだからいい子で待ってる。終わったらちゅーしようね」
「うん」
 もう一度千明の唇を味わい、ソファーの下に避難させていたパソコンを取り出した。


 終わった資料を会社のサーバにアップし、上司にその旨をメールで伝える。先程の濃厚な時間よりも短い間で片付けられた。
「おわったよ、ちー」
「ちー寂しかった」
 ちゅっちゅっと何度もキスをして見つめ合えなかった時間を補う。抱きしめて千明の熱を感じた。
「お風呂入ろっか」
「出たらちーの中に入りたい」
「明日お休みだからいっぱいしようね」
「うん」
 深い口付けをしたあと二人は一般的な2LDKの風呂場よりも広いそれで身体を清める。
「ちーの身体洗ってあげる」
 泡立てた綿のタオルで後ろから抱きつかれながら身体中を擦られた。わざと乳首や下半身をやらしい手つきで撫でられ、千尋のそれは少し頭を擡げる。
「ちー、やぁっ……んぅっ」
「身体洗ってるだけなのに、どっちも固くなってきたね。ちーのえっち」
「ちがうー! ちーが意地悪するから……ぁあっ」
 ギュッとぬめる指で乳首を摘まれた。指が滑って根っこから先端まで絶妙な加減で挟まれ、ぞくぞくと快感が下に伝わる。
「こことベッドどっちがいい? ちーの好きなとこでしよ」
「ベッドが、いい。ちゃんとちーのこと抱きしめたい」
 言葉にすれば簡単に千明からの責めは止んだ。いつもよりも素早く泡を流し、綺麗になった二人はタオルで拭くのもそこそこにベッドに向かった。
 千明と千尋は倒れるようにベッドに入り、お互いの性感帯を触りあう。乳首や屹立を指先で捏ねながら唇を重ね、舌を絡ませた。飲み切れなかった唾液が仰向けの千尋の首を伝いシーツにシミを作る。
「ふぁあ……んぁっ、んっ……んんっ」
「はふっ……ぅんっ……はぁっ……指、入れるよ」
「ん、あっ、……ああっ」
 千尋の先走りに濡れた千明の指が簡単に一本蕾に埋まった。口を広げるように指をゆっくり動かされる。 何度もこの行為を繰り返され、すっかり千尋はその異物感に慣れてしまった。それよりも中を触れられる気持ち良さに、腰が痺れ始める方が怖い。作りかえられた身体は快楽に従順だ。すぐに受け入れようと開いてしまう。
「もっとぉ……くぅっ……んああっ……指、もっとほしいっ」
「いいの? ちーの中にもう二本目入れていい?」
「いいっ……いいからっ……三本でも、いいから! あ、んっ……」
 優しい千明は指を三本に増やしてくれる。押し広げられ、一層快感も増した。奥を突かれるのも、抜ける瞬間もすべて気持ちがいい。
「ああっ……、くぅ、あっ……あっ、あっ……すきぃ……ちー、すきぃっ」
「ちーすっごくかわいいよ。ちーの事見てるだけでイッちゃいそう」
「やぁっ……んっんっ……イク、なら……ああっ……ちーの中でっ、イッてぇっ」
 ぎゅうぎゅうと指を締め付け千明を誘った。欲情した千明の瞳を受け止め、千尋は彼を引き寄せる。肌からつ直接伝わる熱が千尋の興奮を高めた。
「じゃあ挿れちゃうよ……んっ」
「あ、んあぁっ……」
 宛てがわれた切先が押し入ってくる。無理矢理入口を広げられ、それでも健気に包み込んだ。前立腺を掠め、どんどん最奥へと突き進んでいった。
「くぅっ……あっ……んくっ」
「ちーの中あったかくてきもちい」
「あっあっ、……ちーのも、熱くて……ひぅっ……きもちぃよっ」
 すべてが収まりきると額、瞼、頬、唇と順にキスを受ける。唇は取り分け長く、舌は入れずに食むよな口づけをした。
「ずっとこうしてたい。ちーだいすき」
「や、だっ! ちーもちーのことだいだいだいすきだけど、……動いてくれなきゃ、ヤだよ」
 千尋はギュッと中のものを締め付ける。千明を刺激するつもりが、同時に千明自身の形をまざまざと感じてしまい千尋は声が出そうになった。
「ごめんね。今からちーの中いっぱい突いてあげるからね」
「うん、いっぱい、いっぱいして……」
 初めは気遣うようにゆっくりと、だが次第に早く千明の剛直が千尋の中を穿つ。奥もしこりも千尋の弱点で、何度も飛びそうになった。
「あっ、あっ……ふぅっ、んあっ」
「ちーっ、はぁっ……んっ……ちーかわいいよっ……すきっすきっ! ちーすきっ」
 絶頂の波が押し寄せて、出ると思った時にはもう目の前がチカチカした。中が痙攣し千明を締め付ける。直後、ドクッと出される感覚がした。
「あぁっ」
「くぅっ……」
 イった千明が覆い被さって来る。心地よい重みと、出した後の気だるさが千尋をベッドに沈めた。お互いの早鐘がシンクロする。
 浅い呼吸を整えて千明を抱きしめた。誰も聞こえるはずのない部屋で、千尋はこっそりと小声で耳打ちする。
「……ちーのお腹、ちーのでいっぱいにして」
「……明日ダメになっても知らないよ?」
「ちーがいるからいいの。だからもっとしよ?」
 ぎゅうぎゅうと千明も千明の物も締め付けて、お願いという名の催促をした。二人の夜はまだまだ終わりそうにない。

end

***
読みなおしている時どっちがどっちだか分からなくなりました。
これがニコイチというやつなんでしょうかね。らぶらぶちゃんです。
J庭35のペーパーでした!


10/16/13