『大至急うちに来い。緊急事態発生』
 起きたら変なメールが入っていた。差出人は見覚えのありすぎて困る彼氏様。マナーモードにしていたからか、メールは届いてから一時間ほど経っていた。
 仕方なく起き上がって適当な服に着替える。時間的に朝ごはんでも昼ごはんでもない、ブランチをカップラーメンで済ませた。お好みで炒めたもやしとハムを投入。かさ増しには最適だ。
 歯やら顔やらを洗っていると時間はいつの間にか正午。
 そろそろ行かないと怒るだろな。
 財布とSuicaをズボンに詰め込む。そして布団の上から携帯取り、開いた。
 なんで来ないんだ、寝てるのか、起きて早く来いと十件以上同じ人物からのメールが続いている。うざいなーと思いながら『今行く』と一番新しいメールに返信した。
 そっから三十分ばかり歩いたり電車に乗ったりをして、メールの送信元の家についた。おれが住んでるようなマンションなのに、立地の関係でこちらの方が家賃は高い。近くにくりゃいいのに。
 部屋の前に立ち、チャイムを鳴らした。すぐにドタドタうるさい足音が聞こえてくる。
「遅い! なんでメールしてすぐ来てくれなかったんだよ!!」
 ドアが開いたと思ったら知らない女が出てきた。なんだこれ、修羅場になるのか……? なんでそんなめんどくさいことを……。ていうか、アイツ浮気しやがったのか? うっわーないわーちょうないわー。それで緊急事態? もういいや、かえろ。
「間違えましたすみません」
 おっかない顔の美人さんに頭を下げ、そのまま回れ右をした。部屋なんか何回も来てるんだ、間違えるはずがない。つまりはそういうことだろう。
「いやいや、和人くん帰らないで。あってるから。ここ、幹也くんのうちであってるから! つかオレが幹也だから!!」
「……は?」
「おっきい声で言えないからうち入って! ほら早く!」
 腕を掴まれ、自称幹也な女に幹也の家へと入れられた。
 部屋はやっぱり幹也のもので、なのに当の本人は不在だ。余計にこの女への不審感が募る。
 おれ以外に合鍵渡してるやついたのかよ……。
「で、どちらさん? 幹也は?」
「だぁからぁーオレが幹也なの! 起きたらなぜだか女になってたの!! ビビってメールしたのにお前こないしさー。もうパニクって泣くかと思った!」
 何だこの女。また訳のわからんことを。お互い立ちながら話してるから落ち着かないのか? 座らせて深呼吸でもさせた方がいいのか? アイツとしか付き合ったことねーからわっかんねー。
「とりあえず座ったら? 立ち話もあれだし」
 彼女を座らせておれは廊下のキッチンに戻った。勝手に使ったところで怒らないだろう。
「あ、オレコーヒー。砂糖二個で」
 ……幹也と同じだ。たまたま、だよな? 女だしに外の苦手とかで。
 言われた通り一つは砂糖二個、もう一つはミルクだけ入れて部屋に戻った。
「ありがとー」
 コップを手渡すとまたも既視感。
 ローテーブルにコップを置いて、彼女とは反対の面におれも座った。じっと見つめられたが、一口コーヒーを含んだ。まだ熱く、胃に落ちるまでに火傷するかと思った。
「もいっかい聞くけど、誰なんだあんた。幹也は?」
「だからオレが幹也なの! 何度も言わせんな!!」
 自称幹也が言うはこうだ。昨晩バイトから帰ってきた彼は連日の疲労感からベッドで倒れるようにして寝た。朝目覚め、風呂に入るべく服を脱ぎ浴室に入る。そして体を洗っていると違和感を覚えた。脱いだ時点で分かるだろと言いたいが、そこで体が女になっていると気付いたのだ。
「ほら見て! ここにほくろがあるだろ?」
 そう言って幹也(仮)はTシャツの裾を捲ってみせた。確かに幹也と同じヘソの左っ側にぽつんと黒い点かある。だからと言って確信に至るわけではない。そんなものただの要素に過ぎなかった。
「たまたま同じなだけでは?」
「ならお前の右太ももにある小宇宙は! こないだ部屋で屁こいたら臭いって距離おいたくせに、自分がした時オレが同じことしたら殴っただろ!!」
 小宇宙はおれが言った言葉で、右太ももに点在してるほくろのことだ。屁についても記憶に新しい。もしかして本当に……と思う要素が増えていく。信じていいものなのか。
 ぐるぐる考えていると幹也(以下断定的に幹也とする)が脱ぎ始めた。女のストリップショーなんか見る機会は今までない。正直根っからのゲイだし、なんの感情もわかなかった。何やってんだコイツ、くらいだ。
「ほら、隅々まで見ろ! そんでオレが幹也だって信じてくれ!」
 全裸女にそう言われても。という感じだったが仕方なく幹也をベッドに寝かせくまなくチェックすることにした。
 結論からいえば……性別と体格以外完全一致だった。記憶してるあいつの体がほぼそこにある。胸もちんこもないけど、顔も女にしたらこんな感じかなというほど似てる。
 さっきちゃんと見とけばこんなことにならなかったかも。手触りが同じとか思うおれもおれだな。あんだけベタベタ触って、知らない女だったら最悪だったし良かった良かった。
「信じて、くれた?」
 ベッドの上で向かい合って座ると、幹也は上目遣いでおれをみた。
「うんうん。幹也だなおまえ。信じる信じる。で、どうすんの」
 信じたところで幹也が元に戻るわけでもない。普段のバカ面がひたすら困ってる。助けたいのは山々だが、おれにはどうすることもできない。
「とりあえず王子様のキスよろしくちゅーしてみようぜ」
 呆れ顔で見つめると怒った風の顔がぐっと近づいてきた。そのままよけれず唇に柔らかいものが当たる。  読み通り、なんの変化もなかった。
「あー! もうどうすりゃいいの!?」
「一日様子見てみたら? もしかしたら明日になったら元に戻ってるかもだし」
 焦ったところでどうしようもない。一息つくべくローテーブルのコップに手を伸ばした。少しぬるくなってるが、このくらいのが飲みやすい。
 幹也も同じようにコーヒーを飲んでいた。飲みきったようで、コップを戻している。おれも真似して飲みきった。
「待つの決定で、暇だし外出れないしせっかくだからえっちしようぜ。童貞切っちゃおか」
「は? お前危機感ないの?」
 ここまで馬鹿とは。即刻別れを切り出すべきか……。バカ面が戻ってるし。
「不安がったってなんも起きないし。起こおるときは起こるわけだから、今を楽しもうかなって。せっかくだし女の体でヤってみたいじゃん」
 本音は隠す気はないんだな。素直でよろしい。
「ヤるとして、たつか分かんないんだけど。女で抜いたことないし」
「それはオレがどうにかする。……あ!」
 突然幹也の顔色が悪くなった。体が体だけになにかあったのかと不安になる。
「待ってこれ、女だかまんこあるけど男に戻ったらどうなるの……。どこの器官になるの……。中出ししたらヤバイじゃん! 変なとこにザーメンあってオレ死ぬとか最悪じゃん!!」
「バカなりに考えてるんだなって言って欲しいか殴っていいか」
 答えを聞く前に幹也の頭を叩いた。加減するつもりはなかったのだが、無意識に幹也ではないと感じてしまい普段の力が出せない。優しさでは決してなかった。
「いった! 返事させろよ!」
「いらんだろそんなの」
 幹也は痛い痛いと大げさに叩いた場所を撫でている。
「てかさ、後ろ使うなら普段の時逆になってヤるんでも良くない? 変わんないだろ」
「違う! それは全然違う!!」
 待ったというように片手をおれの方に突き出して、断固拒否をされた。ケツ明け渡してるおれってなんなの。なんかムカついたからその手を叩き落とした。
「あーもーいいや。ケツね、ケツに入れりゃいいのね。はいはい。脱ぐからたたせろ」
 ズボンと下着を同時に脱ぎ捨てる。普段とは逆でおれが下に寝っ転がって幹也が上に乗った。時間短縮のためおれはアナルをほぐすのに徹する。
「お前いつもこんな感じなんだな……なんかゾワゾワする」
「慣れればよくなる。ちゃんと舐めろ」
 どっちのなんだかじゅぷじゅぷやらしい音が響いた。眼前にちんこなら興奮するのにまんこって……。ジェル使ってるけど、自前ので何とかなったんじゃないかってくらい濡れまくってるな。一人だけずりぃ。
 もしかしておれは目を瞑ったままのが良いんじゃないか。そしたら完全に幹也にやられてる感あるし。指とかどうにかなるよな……。よし。
 しゃぶり方はやっぱり幹也だ。いい感じ。これならたちそう。
「んっいい感じに、たってきてんじゃん。あっ……ふぅー、もう後ろも大丈夫そう?」
「二本入ってるし良いんじゃね? 結構やらかくなってきてるし」
 初めては正常位がいいとかほざくので、上下を交換した。
「うわーなんか和人かっこいい」
「ふざけたこと言うな。いれるぞ」
 童貞なんざどうでもいい。どうせ後ろでセックスしてたし、捨てるとかそんなの考える必要がなかった。おれは十分セックスを楽しんでたんだから。
「おっ」
「いてえ」
 ぐっぐっぐと押し込むとなんとか全部入った。気持ちいとかじゃなくてなんかこれは……キツイ。
「痛いんだけど……お前なんで、こんなのきもちいわけ?」
「おれも別にこれキツイだけなんだけど。動かしていい?」
「ゆっくりな」
 擦るように出し入れすると、これはこれは。確かにかなりいいな。おれ的には後ろ入れてもらった方が気持ちいけど。
「あー、結構良くなってきた」
「一人だけ楽しむなよ」
「さっきお前が楽しんでたんだから良いだろ。言うわりに汁だらだらじゃん」
 ちん毛がもうべとべとになってる。……そろそろイけそう。
「中と、外どっちがいい?」
「処理してくれるならどっちでも」
「んっ」
 腰を早く動かしてどんどん上り詰める。セックスって言うよりもオナニーって感じだ。一人で楽しんでる。
「ふっう!」
 中にどぴゅどぴゅ流し込む。出し終わるとアナルから退散した。
「あ」
 その途中、体制が少し崩れる。その勢いでちんこがまんこに……。
「いってえええ!!」
 あっちゃー。まさかの両方処女奪っちゃった。処女膜裂けてちょっと赤くなる。
「痛い痛い痛い抜けって!」
「おれ、女に興味なかったけど、こっちのがきもちいのな」
「感想は良いから抜け!」
「いや、まあせっかくだし」
 迷惑掛けられた分もあるので、それを払わせるべく無視して続行した。痛い痛いと泣く幹也がかわいく見えて、だんだん痛みがなくなってきたのか、さらにかわいく見える。
 最後にはぎゅうぎゅう痙攣して締め付けられた。またオナニーで終わらないで良かった。
「……和人さんが幸せそうで……オレツライけど……うん……」
「おまえがおまえって分かってたから女ともできたんだな。一生ねえと思ってたけど。やっぱりおれはウケの方が性に合ってるわ。中の出してやるから風呂行くぞ」
 風呂入って飯食って寝たら、いつの間にかいつもの幹也に戻ってた。その後すぐセックスしたけど、気持ち悪いくらい丁寧で、実際かなり気持ち悪かった。あんなのもう勘弁だな。

end

***
J庭の無配。
おバカです。
攻めが女体化してDT切ってもらう話が書きたかっただけです。
最初に前に入れたらどうなるんだろうと考えてしまって、こんなのえろくかけないなーっとおバカになりました。……喘ぎ声書けないだけです。


10/08/12