最悪だ。何がって、休日なのに仕事のこと考えなきゃならない。優秀なオレは基本的に家に仕事は持ち帰らない。あいつとの時間を少しでも長くとか気持ち悪い思いなんかなく、単純に遊びたいからなんだが。
 そう、今現在絶賛練習中のモンハンを放置してでも部下の尻拭いをしなきゃならないんだ。幸いうるさいあいつは後ろのソファーで寝っ転がりながらもモンハンに夢中で大人しい。カチャカチャと押されるボタンの音しかしない。うらやましいにもほどがある。
 部下なんか持つもんじゃないよ。しわ寄せはこっちにくるんだ。昨日の昼の段階じゃあオレもあいつとクエストやってる予定だったのになぁ。オレのが時間費やしてんのに何でか効率はあいつのが良いんだ、ふざけやがって。オレも早く遊びたい!
 しかしながら、なんでかオレの目の前にはエクセルやらワードやらが画面に広がってるんだろうね。オフィスさん大活躍だよ。斎藤のやろう、今度コーヒー奢らせてやるんだからな。
 地味な訂正なんざ、オレでなくともできるだろ……。何でオレがー!!
 そう余計なこと考えてるから進まないんだよな、知ってる。
「あ。ねぇねぇ、ガム食べる? 昨日後輩がくれたんだよね」
「お前の後輩はガムくれて何でオレの後輩は時間外労働の仕事くれんだろね。差別だ!」
「機嫌直して終わらせな。そんな面倒じゃないって言ったのお前だろ? はい、ガムあげるから口開けて」
 あーんと口をあけて待っていると懐かしのソーダ味のガムが入ってきた。数回噛むと口内でガムの中に入っていたシュワシュワのもとが広がる。無駄に一個がでかいから、一本に入ってる数が少ないんだよな。
「なんでこんな懐かしのチョイスしてんだよ、お前の後輩」
「んーたまたまスーパーで売ってたからつい……とか言ってた。たまに食べたくなるよね」
 そう言いながらあいつも一つ口に入れた。くちゃくちゃくちゃくちゃ。いい感じになるまで噛み続ける。昔の方がおいしかったと感じるのは舌が肥えたからかね。そんな贅沢品食べた記憶はないけども。
「みへみへ」
 なんだとあいつを見てみれば、なんつうか、びみょーなガム風船ができていた。その微妙さといったら夜店にあるスーパーボールのでかいやつくらいの大きさなもんだから、すごいとも下手ともいえやしない。リアクションに困る出来だ。
「見本見せてやるから、見てろよ」
 舌にガムを伸ばすように貼り付けて、慎重に息を吐いた。徐々に大きくなるそれは鼻まで隠すほどにサイズを変えた。子供の頃に鍛えたんだ。これに関して負ける気はしない。
「すごっ。俺そんなにおっきくできたことないや。割れたら大変だから無理しないで」
 視界の半分以上が風船になったから、少しずつ今度は空気を吸っていく。口に入るくらい小さくなったらパクッと食べて舌で割った。このパチンッて音が良いんだよな。
 何回か風船作ってたら味がなくなってきた。ただくちゃくちゃやるだけだと顎が痛くなるからあんま好きじゃない。あいつをみれば、まだくちゃくちゃ噛んでた。
「もう捨てる? 待って紙あげるから」
 さっきガムが入ってた紙を渡してきた。なんかこれに捨てる気分じゃないんだよなあ。
 もう一度あいつをみる。したらなんか良いこと思いついた。我ながらナイスアイデアだ。
 目線は寝っ転がってるからあいつのがちょっと低い。
「おい、こっち向け」
「ん? ゴミは自分で捨て」
 動く口にキスする。丁度開いていて、口内のガムをあいつの中に押し込んだ。すぐに口を離せばオレのガムはあいつが捨てることになる。晴れて解放だ。
「仕事の続きするか。終わったら一緒にクエストしような」
 ガムで息抜きしたからか不満なく作業が進められた。終わってもまだガムを噛んでいたあいつはきめぇの一言につきる。


end

***
久しぶりのぼたもちです。見返りはないですけどwww
短いけども、かわいいちゅーが書けたかな??
ガムネタの元ネタは友達の友達(会ったことない)の元カノとの話を参考にしてます。
使っていいか聞いてないですけど、なんか大分違う感じになったから良いかな^^^^^^
今度聞いときます。


03/09/12





ぼたもちよんこめ





「たっだいまー! 愛しの結人様のお帰りだぞー! 出迎えどうした!!」
 ぐるぐるする頭でなんとか家に帰ってきた結人。ふわふわとしてすこぶる気分が良かった。
「……おかえり、っていいたいけどここ俺んちだよ。近所迷惑になるから早く入って」
「なんだよなんだよ、テンションあげていこーぜ!!」
 克哉に手を引かれ結人の足は一歩三和土に入る。彼の反対の手が後ろに伸ばされるとガチャっとドアが締まる音がした。
「時間遅いから、声のトーン抑えてね」
「つまんないこと言うなよなー!」
 乗ってこない克哉に理不尽な腹の立て方をしていると、彼に靴を脱がされる。そのまま押されて部屋の奥へと連れて行かれた。
 ベッドに座らされ、いつの間にか手には克哉が持ってきたコップがある。飲むように言われ、口答えしながら中の水を飲み干した。いらなくなったコップを克哉に返し、また結人は口を開く。
「あっちー。脱がして。克哉ぬぅがぁしてえええ。ん! んー、はやくー」
 両手を前に突き出し手首をブラブラさせる。
 暦の上では既に秋だというのにまだまだ夏が抜けない。それでも真夏よりは涼しくなってきていてので、結人の服は半袖とその上にカーディガンを羽織っていた。下は季節を気にせず穿けるジーンズだ。
 克哉が溜め息を吐く。そしてカーディガンのボタンが一つ一つ外された。脱がせやすいように体を動かす。
「下着替える?」
「ベタベタしてるからヤダ」
「ならシャワー浴びる? 湯船入らなきゃ大丈夫そうだし」
「洗ってくんなきゃ入んない」
 何もかも面倒くさくてこのままふわふわと眠りにつきたかった。ただベタついた身体はどうにかしたい。
「わかったわかった。入れてあげるからちょっと待って。ここで脱いでから行く?」
「ん。ボタン外したから引っ張って」
 ジーンズのボタンとチャックを解放し、後ろに転がった。少し腰をあげると克哉がひっこ抜く。下着も同じように脱がしてもらうと、腕を引っ張ってもらい立ち上がった。ゆらゆら千鳥足で風呂場へ向かう。
 浴室へと入り椅子に座ると眠気に襲われた。うとうとと目を瞑るとシャワーの音が聞こえてくる。暖かいお湯が心地よく感じた。
「ほら、歩ける? 寝るなら布団で寝な」
 克哉の声が聞こえる。目を開けるといつの間にかTシャツと短パンを着ていた。そして妙にさっぱりとしている。結人は不思議に思いながらも克哉の言う通り布団を目指した。
 半分寝たまま倒れ込むと、もぞもぞ薄い掛け布団の中に入る。結人が奥に詰めるようにして寝ると反対側に克哉が寝転がった。
「暑い」
「二人で寝てるしね」
 暑いと言う結人だが、克哉に手を伸ばしギュッと抱きしめようとする。ぴったりくっつくとまた暑いと言った。克哉は離れればとは口に出しない。そしてまた結人は暑いと言う。
「俺もしていい?」
「ヤダ暑い」
「結人だけずるい」
「うるさい。寝らんないから黙れ」
 結人は目を閉じたまま力いっぱい抱きしめた。


end

***
今回はあーかわいいな!! って思いながら最後まで書けました!
短いと気持ちが継続できていいですね(*^ω^*)
大学生編でした。


10/12/12





ぼたもちよんてんごこめ





「……ちけぇよ」
 目覚めると眼前には克哉の顔があった。あまりの近さに一瞬驚いたが、うっすら残る最後の記憶と二日酔いが重なって頭痛がする。
 起こさないようにとベッドを出ようとしたが、片腕が克哉の身体の下にあるせいで動けない。痺れから感覚も薄らいでいた。血を送らないわけにはいかないので、起こしてもかまうまいと腕を引き抜く。
「ん……」
 ゆっくりと克哉のまぶたが開いた。半分あいたかと思うとまた閉じる。そしてもぞもぞと克哉の身体がさらに近づいてきた。
「水飲みたいんだけど」
「……まだ、もうちょっと」
 そういうと再び寝息が聞こえてくる。
 結人の冷たかった手先はじわじわと熱を取り戻していった。頭痛は一向に治らないが、これでは一層動けない。痛みを我慢して瞳を閉じる。
 眉間に皺がよるばかりだ。それでも少しは耐えてやろうと思った。肌に感じる克哉の熱が不快ではなかったから。


end

10/25/12