「あー、ヤりたいなー」
 平凡な容姿のどこにでも居る様な男子高生が呟くにしてはいささか不健全である。だが将斗にとっては口癖だった。
 校則で禁止されている訳ではないが、髪を傷めることなく黒髪で過ごしている。特徴といえば黒目が大きいと言うくらいだ。ふわっと首筋にかかる髪も顔も、その上学力も平均並みだった。
 ただし人よりも性欲が強く、それに対する羞恥心も我慢強さもない。人間なんだから仕方がない、と口に出すことにも抵抗がない。故に、困るのはいつも周囲だった。
 場をわきまえずどこかしこでもヤりたいだのあの時のセックスはどうだっただの動く口を止めるのは難度が高かった。
「昨日もそんなこと言ってなかった?」
「そうだっけ? いちいちそんなこと覚えてないよ。とりあえず今すっごいヤりたい。突っ込まれるのも良いけどたまには突っ込みたいなー。誰かいない?」
「……知るか」
 生憎一馬には気軽にできる知り合いなどいなかった。当然この会話も何回目になるか分からない。
「やっぱさーヤった後掘られたくなるときあるじゃん。だから女も良いけど男のが良いんだよねー」
 誰かに向けてと言うよりも独り言に近い将斗の話は止まらない。忘れてはならないのは学校の帰り道で、駅に向かう途中だと言うことだ。
「つか、オレまだ一馬とヤってないんだよね。仲間内でオレとヤってないのお前だけだぞ」
「なっ!? 直貴ともヤったのかっ? アイツ彼女居るだろ!」
 信じられないとばかりに思わず一馬の足は止まった。それでも将斗は前を歩き続ける。数瞬後には一馬が小走りで将斗の横に戻っていた。
「直貴? あーアイツ結構早くからノってきたぞ。確か、二人目  多くて七人で連んでいる将斗たちは一年時のクラスメイトと二年からの新規メンバーで成り立っていた。一馬は一二年共に将斗と同じクラスだ。
「彼女居たのにヤるお前らってどうなのよ……」
「誘ってきたのアイツだし。最初は突っ込んでくるばっかだったけど、最近じゃアイツ突っ込まれるのも結構好きになってるし」
 けらけら笑う将斗は他人事の様で、事の重大さに気付いていない。一馬の感覚では好ましくない行為だった。
「浮気はダメだろ……」
「浮気? 違う違う。そんなんじゃないから。オレら別に好き合ってる訳じゃないし。遊びじゃん」
 割り切った関係で、友人間の遊びの延長でセックスをする。下手に変なのを引っ掛けるよりもよっぽど安全だと将斗は思った。
 時折見せる一馬の真面目さに面倒くささを感じつつも、いわゆる一般的な感覚を思い出すためには良いかとも思っていた。それにそんなところに将斗は好意さ持っていた。
 同じ意見を言い続けるのはなかなか難しい。人と触れ合うことで感化されて考え方など簡単に変わってしまうからだ。こんなにまじめとはほど遠い将斗と一年以上共に過ごしているにも拘らず、変わらずにいる一馬に将斗は尊敬の念も抱いていた。真剣に。
「彼女が知ったら泣くぞ。ヤっちまったもんは仕方ないとして、……いや全然仕方なくないけど! 直貴とヤるのもうやめとけ」
「わかった。オレからは誘わないし誘われてもあしらう」
 基本的に将斗は一馬の言うことを聞いた。間違っていないと思うからだ。それに、
「よし、いい子だ」
 そう言って頭を撫でられるのは嫌いじゃなかった。むしろセックスの次くらいに好きだった。キスをするくらいになんだか満たされた気持ちになる。
 これも将斗が一馬から離れない理由の一つだ。
「……ヤんないのってオレとするのやだから?」
 聞きたい聞きたいと思いつつ、怖くて聞けなかった言葉を将斗は出してしまった。なんとなくだが、一馬にだけは拒否されたくなかった。冗談で言う分には断られても何にも……思わないようにしていた。
「俺は友達とそう言うのはできない。というか、恋人以外とはしたくないの。ほんとはお前にだってしてほしくないし、いい加減落ち着けって思ってる」
 病気のことやいちいち探す手間を総合して考えると一馬の言うことは正しかった。それでも将斗は縛られるのが嫌だった。なんだかムズムズするのだ。好きな時に好きなだけヤれる今が楽だとどうしても思ってしまう。
「高校を童貞で過ごすのか……」
「うっさい。早いとか遅いとか別にいいだろ。まだ高校生なんだから!」
 もうすぐ駅に着く。将斗と一馬の家は反対方向だ。駅に着けばはいさよなら別れてしまう。
「うーん……」
 簡単なようで難しい問題を将斗は考える。これならまだ三限の数学の抜き打ちテストのが簡単だった。
 結局答えが出る前に駅に着いてしまった。帰る様子のない将斗を見て、改札の前に一馬も留まった。そして邪魔にならないようにと一馬に誘導される。
「あー、うん。そうだね。なら、オレと付き合うか。それならオレも落ちつくし一馬も脱童貞非処女だ!」
 さも名案だとばかりに将斗は頷く。一馬の呆れ顔など目に入らない。
「おま、えなぁ……違うだろ。なんか色々違うだろ……」
「何にも違わねーよ、お互いにプラスでしょ。お前だってオレが誰かと付き合った方が良いって言ったじゃん。オレはできればとりあえずは良いし」
 自信たっぷりの黒目にこれ以上の否定はシャットアウトされるなと一馬は悟った。
「オレ、一馬のこと好きだし。好き同士なら良いんでしょ? さすがに最初からは入れないから」
「すきって……確かに俺もお前のこと好きだけど、それは友達としての好きであって……恋人になるのとは別の話だろ」
 聞いてもらえないと分かっても反論せずにはいられなかった。だが、こんな場所で長々と話したくもない。
 少々田舎とはいえ下校時間である為に人通りは多い。そんな場所で付き合う付き合わないだと話すのは一馬の常識から外れている。しかも男同士というマイノリティも追加されている。考えただけでパンクしてしまいそうだった。
 偏見があれば将斗の側にはいない。だがやはりまだ大っぴらに出来るほど日本は整っていない。
「好きってことは変りないし、オレは構わないけど」
「……よし。とりあえず家に帰ろう。そんで着いたらメールする。電話かスカイプしよう。な?」
「えー、じゃあオレ今日はできないわけ?」
 不満でいっぱいの表情に目に負けそうにるが一馬は押し通した。
「一日くらいしなくたって死なないから安心しろ」
 語尾には隠された言葉があったが、出そうになった言葉を自身の為に一馬は飲みこんだ。
「オレが我慢できないんだって。もー……良いよわかった。でも、話してる時オレ一馬で抜くから。これだけは譲らない」
 言葉を飲み込んだまま出なくなった一馬を放置して将斗はじゃあねと改札を抜けて行った。一馬が動けるようになったのは将斗が電車に乗った頃だった。


end

***
はじめはただのヤリチンびっちがえっちするってだけの話だったのにどうしてこうなった。謎すぎる……。
とりあえず、スカイプしてるシーンをかけたら書いてみますw
載せるのはたぶんこの下です。載せたらtopには記載しませんが多分どっかしこに書くとは思います。
正直視点がぶれてるので読みにくいかもしれませんね、これ(´・ω・`)
一馬の消したら微妙になっちゃいそうだったので……。
ちなみに直貴はなおたかです。打つ時はなおきでしたがw


08/29/11





おまけ





 将斗が家に着き、部屋着に着替えてもまだメールはならなかった。キッチンでコーヒーに少しミルクを加えて部屋に戻った。パソコンを起動する。そしてその間に一馬にメールを送った。一馬の家の方が将斗よりも少し遠い。
 指紋認証を済ませ、デスクトップに切り替わる。スカイプにログインして軽くメールチェックをして時間をつぶした。
 一馬のアイコンが黄緑色に光った。ヘッドセットをパソコンにつないで頭に取り付ける。クリックしてコンタクトを取ると一馬と繋がった。
「ちょっとまって、まだ着替えてない」
「生着替え? カメラつけろよ」
「……持ってないから」
「買ってオレとエロイプしよ」
 沈黙が流れ、スルーされたと分かった。仕方なく、一馬の準備が整うまで待った。将斗とて限度はわきまえてる。
「お待たせ」
「ちょー待った。おかげでコーヒーが丁度いい温度になったけど」
「猫舌には丁度良かったな」
 自分で言うのは良いが人に言われるとなんだか癪に障った。将斗は軽くだが熱いのが苦手だった。以前ザーメンなら大丈夫と偉そうに言った。
「で、考えまとまった?」
「早速言うな……少しぐらい考える時間くれても良いだろ」
「家帰るまでがシンキングタイム。十分与えたつもり」
 駅から一馬の家までは三十分以上ある。将斗からすれば十二分に時間は設けたつもりだ。
「ほら、イエスって言っちゃいなよ。拒否権なんか最初からないんだからさー」
「お前知ってるだろ……オレの恋愛経験値」
「中学時代バレンタインに告られてホワイトデーには既に破局してたやつでしょ? 良いじゃん、初カノってわけじゃないんだし。まあ初カレだけど」
 けらけら笑うとヘッドホンのスピーカーからため息が聞こえてきた。将斗はやはり顔が見たいと思った。そうでなければからかっても面白くはないからだ。
「二人目が男とか俺にはハードルが高すぎる」
「差別するの良くないぞー」
「違う。別にお前たちのおかげでそういうのはなれたよ。でも聞くのと見るのはまあ別に良いとして、当事者には俺はなれないって言ってるんだ」
 一馬は周りはどうあれヘテロには違いなかった。将斗に好みを聞かれた時も、それなりに見るアダルトな作品も相手は女だった。将斗たちとふざけ半分で見たAVも興奮というより怖いもの見たさのが強かった。
「変にこだわるなって言ってんの」
「こだわるだろ普通。お前みたいに適当に決めたくないんだよ。俺にとっては重大なんだ」
 将斗とて適当に言った訳でなく、一馬だから縛られても良いと思えたのだ。それを分かろうとしない一馬に苛立ちを覚えた。
 これまで何度か恋人ができたこともあった。自分以外とヤるな自分を優先しろだと煩わしくセフレだった頃の方が何倍もよかったと後悔を繰り返した。それからというもの、制限をかけられることなく気ままにセックスのできるフリーな状態で過ごしてきた。
 それを自ら縛られにいくのだ。それも、一度だって身体の関係を持ったことのない一馬とだ。将斗も表面では見せないもの、本気だった。
 直貴のことでさえ浮気を良しとしなかったのだ。遊びだなんだと言ったところで一馬は許しはしないだろう。それでも良いとはっきりとは言わないものの思っていた。
「ならこだわってオレと付き合え。じゃなきゃウリでもするぞ」
「脅してんのかしてないのか分かんないこと言うなよ……」
 一馬一人に絞るか不特定多数の人間に身体を売るか、二つに一つ。変に頑固な将斗は一度決めたことは違えない。断られれば必ず身を売るだろう。
 一人で良いという将斗の気持ちに一馬は気付くことができるだろうか。
「どっち」
「……とりあえず一週間。それでお前が我慢できたら付き合ってやる。俺は付き合っても一ヶ月はするつもりないから」
 つまり最悪一月、毎日でもヤりたいと言ってほぼ実行してきた将斗が誰とも身体を合わせることなく過ごさなければならないのだ。
 条件に条件で返した一馬に内心舌打ちをしたが、それでもOKを貰えたことに過剰に喜んでいる自分がいた。思っていた以上に将斗の中で重大なことだったらしい。
「……分かった。でもオサワリはありでしょ? 一人でオナニーなんか虚しすぎる」
「俺にそれを言うかねぇ」
「ああ、わりぃ。チェリーにはわからない虚しさだったな」
 笑いながら言うと、将斗はズボンから息子を取りだした。柔らかいそれに右手で緩く刺激を与えていく。有言は実行しなければ。それに昨日出したとはいえ気持ち的には溜まっていた。
「チェリーで悪かったな。どうせ俺はいつだって右手がお友達だよ」
「だからオレが奪ってやるって言ってんじゃん。変に決めないでヤっちまった方が楽だぞ?」
 話しながらも少しずつ硬度を持ち始めるそれの先端を今度は左手で強めに揉んだ。ゾクゾクとする快感が全身をよぎる。
「はじめは入れただけでイっても許してやるよ……んっ」
「ばか! ……おい、もしかして本当にしてるのか?」
 信じられないと言う一馬の気持ちが声からも伝わってきた。それがおかしくて噴きそうになるのを将斗は必死に抑える。
「一馬クンの童貞ちんぽがオレの中に入ってくる……ッ」
 左手の中指を咥えてからパンツの中に入れ、窄まった穴にぷすりと沈めた。ゆっくりと肉を割くように中へと入っていく。身体をずらし浅く座ると背中に体重が掛って不安定だった。
 回転式の椅子は後ろへと転がってしまうかもしれない。快感と不安の混ざったなんとも言えない興奮に将斗は頬を緩める。
「流石に一本じゃ味気ないねー」
「ばか、止めろ。切るぞ?」
「だぁめだってぇ。切んないでなんか話しろ」
 一人でこの恐怖を味わうのは寂しいものがあった。誰かと不安定な状況でやるからこそスパイスになる。一馬が見てるならまだしも、声だけでは面白みに欠けた。仕方なくベッドへと移動する。パソコンをベッドに向け、ヘッドセットをはずし机の中からローションを取りだす。マイクが内蔵してあるパソコンだ。会話に支障はきたさない。少しボリュームを上げれば先ほどと同じように一馬の声が聞こえた。
「ちょっと移動した。こっちのがやりやすい」
「そういう報告も俺の前でする必要もない」
「お前が駅前で話したくないからってこうしてスカイプやってんじゃん。それにオレヤるって言ったし」
 片手にローションを垂らし両手で温めるように伸ばし、それを竿と穴に塗り付けた。滑りが良くなり、刺激も強くなる。穴にも二本の指をいれ押し広げるように動かした。
「ふぅっ……やっぱ指たんない。乳首もいじりたいんだけど。道具使うのってアリ?」
「ナシ! 変な音聞こえるんだけどほんと止めろよ!!」
 くちゅくちゅとローションの所為で水音が響いていた。それをマイクが拾っているのだろう。
「オナニーしてんのに自分で痛くするほどマゾじゃないしー。一馬が痛くしてくれるんだったら全然構わないけど?」
 にやにやと一馬がしないであろうことを吐く。痛がる将斗を見れば一馬はその行為を止めるだろう。
「ん、あっ……だめー! やっぱり乳首ほしい。キチクなこと言わないでバイブかローター使わせてよ」
「俺に聞くなよ……」
「だって彼氏じゃん。オレ結構いい子だよ?」
 縛られるのを厭うたのに自ら縛られに行った。威張られなければ縛れないと思ったからだ。繋ぎ留めるには繋がれるしかない。
「良い子はスカイプ中に自慰なんかしないだろ」
「あはっ、だって一馬が入れてくんないんだもん。オレのここきゅうきゅう指くわえてんの。二本じゃ足りないし指じゃ我慢できないって」
 中に入れている指を見せれる訳でもないのにひくつく中を広げた。空気が入り指を動かすとぐぷぐぷと音を鳴らす。まるで腹が空いているみたいだ。隙間を与えないほど広げ埋めてくれるモノを欲しがっている。
 ローションと腸液が混ざり合ったそこは赤い秘肉を光らせていた。
「……前立腺引っ掻けばいいだろ。前に気持ちいって言ってたよな?」
「とりあえず感じるとこだけ突いてればいいかってのは経験少ない奴の考え。周りからじわじわ責めて最後に一番良いとこ突いて。あ、イタズラに突くのは全然アリだな」
 する時のアドバイスを一馬は怒ったように声を荒げた。
「だから童貞で悪かったな!」
「童貞で良いから早くオレの中に来いって言っての。もうこの会話何回目よ?」
 堂々巡りの会話に飽きたと将斗は呟く。
「仕方がないから前立腺責めてあげる」
 ぷっくりと膨らんだ一点をきれいに整えている爪で軽く引っ掻いた。
「あうっ……ふ、あっ」
 全身が軽く痙攣し、脳に直接快感が走る。将斗の握っているそれはぴくぴくと動き先走りを垂らしていた。
 さらに前立腺を責め、鬼頭を中心に扱く。イキそうになる身体が意識をしないと空気を取り込んでくれない。
「あっ、ああっ……かず、まぁっ」
 どぴゅっと飛びだしたそれは将斗の手と腹を濡らした。じわじわと快楽が身体を回り、同じようにイった事による気だるさも出てきた。
「……もう十分付き合ったから良いだろ。明日な」
 肩で息をする将斗をよそに一馬はコンタクトを遮断してしまった。ご丁寧にログアウトまでしている。
「……かずまのけち」
 寂しく将斗は後始末をした。愛撫しながらするのが良いのにと文句を口に出しながら。


end

***
タイトル思いつかなかったのでおまけで。
エロ書けません!
そんでもってマイクは高性能だなってのと思ったより喘がせられなくて残念(´・ω・`)
もうちょっと喘ぐこのつもりだったのですが、喘がせるの下手でorz
ちなみに一馬は勃ってます。自己嫌悪してる所です。
そんで一週間我慢して正式に付き合った後、将斗は一週間しか我慢できず一馬を押し倒します。一馬も流されて童貞喪失。処女は将斗によってちょっとずつ慣らされてから失います。おめでとうりばっぷる! でも割合的には一馬のが入れてます。
また素敵な誤字があったら教えてね。


09/07/11