ある夏のことでした。真っ黒いもじゃもじゃが散歩をしていると、小さな籠が道に落ちていることに気づきました。覗いてみると、中には生後半年に満たない小さな小さな人間の赤ちゃんがすやすやと寝ています。
 不思議に思って籠を持ち上げると赤ちゃんの目がパチリと開いてしまいました。驚いて籠を落としてしまいましたが、ギリギリのところで地面に落ちることは阻止できました。
 赤ちゃんは泣くこともせずじっともじゃもじゃと同じ色の瞳で見つめてきます。そして小さなその手を必死に伸ばしてもじゃもじゃの髪をつかみました。キャッキャと楽しそうに笑って髪を引っ張ります。どこからそんな力が出ているのかと言うほどに引っ張るので、もじゃもじゃは困った顔をしました。痛みはないにしても、髪を捕まれて頭が動かせないからです。
「小さきものよ、離してはくれないか」
 頼んでみても笑顔を浮かべるだけで離してはくれません。仕方がないのでもじゃもじゃはそのまま歩いて帰ることにしました。幸い彼は目を瞑ってでも自由に歩ける質でしたから、問題はありません。
 家につくとみんなにびっくりされてしまいます。彼が連れてきたのは人間の子供で、彼自身は魔王だったからです。

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前にメモにあげたものをちょっと変えました。
殆ど変ってないです。


12/16/12